2021 AsLMS ドバイ / WECへの挑戦

 

2021年2月。

CARGUY 木村武史は、中東「ドバイ」にいた。

 

2021年のアジアン・ル・マン シリーズに出場するため、CARGUY Racingはドバイ入りしていたのだ。

コロナ渦収まらない2021年、例年であれば全4戦でアジア各国を転戦するシリーズだが、ドバイ・アブダビで2週間に渡って4戦を集中して戦う事になっていた。

 

今期のアジアン・ル・マンはスイスの名門コンストラクターの「ケッセル」とジョイントし、フェラーリ488GT3で参戦。

チームはコロナ対策のため、人員を最小限に絞りドバイへ渡航した。

 

 

木村は1戦目より2戦目、2戦目より3戦目と徐々に車とコースに慣れ、数多くいるジェントルマンドライバーの中でも安定した走りを披露。車とコースへの順応性の高さは木村が生まれ持ったセンスかもしれない。

 

ただ、今シーズンはBoPで有利に立つポルシェ勢が圧倒的な速さを見せ、ポルシェ以外のマシンを使うチームは苦戦を強いられていた。

そんな中、最終第4戦では最後尾から優勝という“奇跡”を起こし、シリーズ中でポルシェ勢以外では唯一の勝利を得た。

 

 

そして日本へ帰国した直後、ケッセルから木村へ一本の電話が入る。

アジアン・ル・マンでの実績が評価され、ケッセルが持つWECシリーズへの参戦枠の打診の連絡であった。

 

 

そうしてCARGUY Racingは、WEC第4戦の『ル・マン24時間』を含むWEC2021年シリーズへ、第2戦のポルトガルから参戦を開始することが決まった。

ただし、コロナ渦による隔離制限や渡航規制、参戦中のスーパーGTとの日程の兼ね合いも見極めつつの判断となる。

 

 

もともと今期はCARGUY RacingでのWEC参戦を計画し、フェラーリ488GTEも購入していた。

だがコロナ禍は衰えることなく、このままではスタッフの隔離などチームの負担が大きくなるため断念していた。それが、今回のケッセルのオファーで新たな道が開いた。

木村単身であれば自主隔離も大きな支障はないと判断し、WECへの出場を決めた。

 

ル・マンへの参戦はオーガナイザーのACOとフランス語で何不自由なく交渉できる体制が必須。これもケッセルとのジョイントなら任せられる。

「ケッセルと組めばル・マンにも行ける自信がある」

悲願のル・マンでの表彰台がまた一歩近づいた。

WECへの参戦が決まり、木村は株式会社ルーフの代表取締役として仕事へ打ち込む傍ら、日々トレーニングに尽力している。

スーパーGTに続きWECへの参戦決定と、今期のCARGUY Racingの戦いは続く。