2024-25 ALMS R5 & R6 Abu Dhabi

2月14日~2月16日
ヤス・マリーナ・サーキット
UAE・アブダビ
CARGUY #57 Ferrari 296 GT3
Takeshi Kimura / Casper Stevenson / Daniel Serra
レース1は追突され炎上。レース2ではチーム戦略とドライバーの懸命な走りにより、6番手を勝ち取る。
ル・マン 24時間の参戦権を賭けて優勝を争うアジアン・ル・マンシリーズ(以下ALMS)。
今シーズンのALMSはスイスの名門チームでもあり長年木村と共にELMSでもタッグを組んでいるKESSEL と共にエントリー。ALMSではCar Guyのエントラント名で出走している。
シリーズ最終戦。シーズン最後とあって全チーム死に物狂いでル・マン 24時間へのエントリーを賭けた闘いが幕を開けた。
PRIVATE TEST
今回木村はドバイからアブダビへの移動期間に出来た時間でドバイでシミュレーターを用いたコースの習熟を行なった。ヤス・マリーナ・サーキットは過去に走行経験もある為、既視感を感じ、コースの走り方もいつも以上に鮮明に頭に描きながら臨む事ができた。
また、マシンはドバイでストレートスピードに悩まされていたが、レース後エンジンオイルの減りが通常よりも早く、パワーロスをしていた可能性が判明した。エンジンライフからしても交換しても良い時期だった為交換を実施。するとそれまでの走りが嘘だったかの様にマシンのストレートスピード、コーナーからの立ち上がりが速くなった。
このプライベートテストでまずは体とマシンをコースに馴染ませて行く。シミュレーターの成果なのか、元々木村と相性の良いサーキットだからなのか、はたまたその両方なのかいつもよりも早く車輌感覚を掴む事が出来た。予選、決勝に向けて木村としても前戦のドバイより期待が持てる事を感じていた。
このプライベートテストではセラが1:53.686をマークして7番手でセッションを終えた。


PRACTICE1ではダニエル・セラがマークした1:53.672がチームのベストタイム。全体7位。
続くPRACTICE2ではスティーブンソンが記録した1:53.903がチーム内ベストとなり、全体13位。
木村はプロ2人にターン14から19のブレーキングについてアドバイスを受けながらも「アドバイスを見つけるのが大変」と言わしめるほどに走りは速く、安定していた。
チームミーティングで笑いが起こった場面があった。それはシルバードライバーのスティーブンソンが木村と自分のデータを指し示しながらアドバイスをしていた所、全員の顔が曇り、データを見返していた。スティーブンソンもその様子に気付きデータを確認すると上手く走れているのは木村の方で、何とスティーブンソンがアドバイスしていた走りが自分の方であったのだ。
彼は「学ばなければいけないのは私の方ですね!」と。これには一同が大いに笑い、ポジティブな雰囲気の中でチームは予選を迎える事になった。
QUALIFYING
1つの週末に2レース行うALMSでは予選のベストタイムがレース1のグリッド順位になり、2番目に速いタイム(セカンドベスト)がレース2のグリッド順位を決めるフォーマットとなっている。
今回のアブダビでは過去のレースからクラッシュによる赤旗の可能性を考慮し、いつもよりも序盤にベストタイムを出す様に戦略が組み立てられた。そしてチームの予想通り荒れた展開となった。予選は15分で行われる。残り6分の時点で42号車ランボルギーニがコース上で停止、その後残り4分時点で87号車 ポルシェが27号車マクラーレンとの接触によるパーツ脱落、デブリにより赤旗が掲示されると、リスタート後の残り2分時点でも87号車 ポルシェが他車との接触で2台がスピン、コース脇に停止した。そして予選セッションはそのまま終了となってしまう。
セカンドベストのタイム計測も出来ないチームがある中で木村は序盤からペースを作り、他のドライバーよりも早くタイム出しを行なった。その結果、ベストタイム1:55.525(10位)、セカンドベスト1:57.288(4位)と確実に記録を残す事ができた。ドバイではグリッド後方からのスタートだったにも関わらず、今回レース2に至ってはGTクラスでは2列目のグリッドを獲得したのだった。CAR GUYのガレージでは拍手が沸き起こり、レース1を迎える事となるのだが…


RACE 1
他車からの追突を受けて炎上。レースリタイヤを余儀なくされる。
57号車 CARGUY フェラーリの木村は予選11位を獲得したが、その後予選9位の27号車Optimum マクラーレンが予選中にクラッシュ。赤旗の原因を作ったことで予選全ラップ抹消となり、スターティンググリッドは10番手に繰り上がった。
そしてレーススタートの時間を迎える。グリーンフラッグが振られた一周目。 79 号車TSUNAMI RACING ポルシェと 46号車 HERBERTH ポルシェが接触。46号車 はターン2のイン側バリアに激しくクラッシュし、セーフティーカー(SC)が導入される。その後赤旗によりレース中断となる。全車ホームストレートへ向かい、SCが赤旗ラインに停止したのに続き1列でストレート上に停止。ターン1~2の混乱を避けた木村はポジションを1つあげて9位で1周目を終えた。
79号車 TSUNAMI RACING ポルシェは自力でピットに戻るが赤旗中はパルクフェルメとなり車輌の修復はできず。結果リタイヤとなっている。


1時間20分以上に及んだ赤旗のあと、レースはSCの後方でリスタート。レース時間は30分延長されることとなった。
3周のSC走行が行われ、5周目で再びグリーンフラッグ、レース再開となる。ここで抜かれてしまうが13位をキープした。
しかし4周目の最終コーナーでLMP3クラスの35号車ULTIMATE と GT3クラスの 81号車 WINWARD AMG の2台がクラッシュ。両車とも各クラスのランキングトップ同士であった。これで再びSC導入となる。
11 周目 96号車 2 SEAS AMGがタイヤバーストにより緊急ピットイン。大きく後退し、木村は11位までポジションを戻す事になる。
しかし木村の車輌は序盤に接触を受けており、マシンバランスを失っていた。13周目には85号車 Iron Dames に抜かれ12位、続く翌周にはターン6でのブレーキングからターンインしている所へ、木村の車2台分以上後方から98号車 EBM アストンマーティンによる追突を受けてしまいスピンした。57号車 CARGUY フェラーリは再びスタートしたものの、追突を受けた左リヤフェンダー周辺から出火。ターン9付近のコースサイドの消火器付近に車両を止め、レース1を終える事となってしまった。そして衝突の際にステアリングが回転、木村の左手を強く打ち、木村は痛みを訴えていた。


RACE 2
激走、そして戦略による6位入賞
前日の車輌炎上もメカニックによる懸命な作業により翌朝には修復されていた。また、木村からは前日の打撲は走行に支障はないとの報告が入り、スターティンググリッドに着く事となった。
ブロンズドライバー登録をされていても、その実力はプロのシルバーレベルと言われるドライバーが10名以上はいるという今大会。その中でレース2は4番手からスタートする。これはチャンピオンシップが異なればポールポジションに近い意味を持つ。
アブダビではまずスタートでの混乱を予想しながら走る事が求められる。先導車が2周通過後、ついにALMS最終戦の火蓋が切って落とされた。ローリングスタートでスピードを乗せたまま各車第一コーナーへ殺到する。そしてやはりと言うべきか、ターン3で42号車ランボルギーニのクラッシュがあり40分間の赤旗中断となる。この時点で5位。レースは赤旗中断の時間に相当する36分34秒だけ延長されることとなった。
レース再開後、木村はラップタイムペースに勝る後続との苦しい戦いを強いられる。相手はシルバードライバー並みの実力を備えたブロンズドライバー達である。チームもそれは想定しており、ここでは無理をせず次のドライバーであるスティーブンソンにバトンを渡すべく、ポジションは気にせず無事に走り切る事が木村のミッションとなった。前日の様なリタイアを避けるためだ。
一時14番手まで下がったものの、この後にCAR GUYの鮮やかなイエローのマシンがヤス・マリーナで躍動する。 28周目には19号車 Blackthorn レーシング アストンマーティンと28号車AFコルセ フェラーリをパスして12番手。31周目に77号車 Optimum モータースポーツ マクラーレンを抜いて11番手にまで戻すと、翌32周目には 10号車Mantheyポルシェを抜いて10番手まで順位を上げていった。


その後もバトルを繰り返し、37周目にドライビングタイムリセットの為、ピットスルーを行って18番手まで後退。しかし他車も同様にドライビングタイムリセットのピットスルーを行っていく。そして40周目には14番手まで浮上。翌周にブロンズドライバーに課された1時間30分の最低乗車時間を経過した所でシルバードライバーのスティーブンソンにステアリングを託した。
しかし間の悪いことにその翌周にバーチャルセーフティーカー(VSC)が入ってしまう。ここまで待ってFCY中にピットストップできればベストだったが、グリーン中にピットストップを行った為、後方へ順位が下がっており、VSC中にピット作業を消化した他車が前に出る形となった。幸いトップもピットに入ったことから、周回遅れになることは免れ、スティーブンソンは24番手でコースに戻った。
このタイミングでブロンズドライバー →シルバードライバーとつなぐチームとブロンズドライバー →ゴールドドライバー又はプラチナドライバーへと交代するチームへとストラテジーが分かれている。
アウトラップを終えた43周目は23番手で帰ってきた。その後は他車のピットインのため、一挙に11番手まで浮上。67周を迎える頃には再び各車のピット作業が始まり、70周目にはスティーブンソンもスプラッシュ(短時間)給油のピットイン。タイヤはそのまま走り続ける事にした。34.7秒のピット滞在時間。57 号車CARGUY フェラーリ スティーブンソンは戦略の違いから83周目には束の間のクラストップに立つ。
そしてここで84周目、スティーブンソンからプラチナドライバーのセラに交代する。その際にスティーブンソンのスティントでコース外の追い越しがあり、ペナルティの10秒ストップを消化してから給油、ドライバー交代、タイヤ4輪交換を終えて14番手で復帰した。
上位9台はあと1回のスプラッシュ給油の可能性がある状況。また、74号車は3周前、16号車は2周前に給油を行っており、残り時間の関係から燃費走行かFCY等による燃費のリカバリーが必要とみられる。つまりピットインしてくれればこれらのマシンをパスできる可能性を持っていた。そしてプロドライバー同士の対決、戦略の対決の中で、前を走る6台がスプラッシュ給油のため順位を下げ、セラは6位でゴールラインを通過することとなった。
4番手スタートから、中盤のブロンズ最低乗車時間直後のVSCは戦略的に運が悪いタイミングとなってしまった。チームの戦略により最後のピットインのタイミングを遅らせ、4輪ニュータイヤで軽いタンクの状態で走れたことも奏功した。その結果セラが全体2番手のベストラップを記録するなど、後半の路面状況でのマシンのパフォーマンスは悪くなかったといえるだろう。
残念ながらALMSではル・マン 24時間参戦のチケットを手に入れる事は出来なかった。昨年のELMSでも最終戦の最終周にライバルチームのチームオーダーが発動され、シリーズチャンピオン=ル・マン 24時間参戦の権利が手からこぼれ落ちてしまった。そして今回のALMSではヨーロッパ選手権の様相を呈するがごとくル・マン 24時間参戦のチケットを求めて強豪チームのエントリーが相次ぎ、アブダビのレース1で木村が追突された様に、決戦の地では死に物狂いの闘いが繰り広げられた。
ここで感じるのはル・マン 24時間参戦が全世界のドライバーにとって計り知れない価値を持つ事だ。チームオーダーを発動してでも、国や地域を跨いででも、手に入れたいチケットなのだ。
そのル・マン 24時間に6年連続で参戦してきた木村。世界中のドライバー同様にその参戦権を求めてこれからも挑戦は続く…
2024-2025 ALMS RACE CALENDAR

RESULTS
Session | Position | Best Lap | Driver |
Private Test 1 | P7 (of 30) | 1:53.686 | D. SERRA |
Free Practice 1 | P7 (of 30) | 1:53.672 | D. SERRA |
Free Practice 2 | P13 (of 30) | 1:53.903 | C. STEVENSON |
Qualifying GT | P10 (of 29) | 1:55.525 | T. KIMURA |
Qualifying GT (2nd Fastest) | P4 (of 29) | 1:56.288 | T. KIMURA |
Race 1 | DNF | 1:57.298 | T. KIMURA |
Race 2 | P6 (of 24) | 1:53.751 | D. SERRA |














