2025 ELMS RD.6 PORTIMAO
10月14日〜18日
ポルティマオ
ポルトガル、アルガルベ
Kessel Racing #57 Ferrari 296 LMGT3
Takeshi Kimura / Ben Tuck / Daniel Serra
シリーズランキング5位も
木村は走りに自信を深めてシーズンを終えた

木村が参戦するヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(ELMS)。年間王者には翌年のル・マン 24時間への参戦権が与えられる。
そのELMS最終戦に用意された舞台は起伏に富んだポルティマオ・サーキットだ。2008年に設立されたこのサーキットはブラインドコーナーや下りのコーナーもあり、ドライバーには多くのスキルを要求されるサーキットでもある。2026年のル・マン 24時間参戦権を賭けた最終戦のレポートをお届けする。


TEST DAY
午前中のセッションはダニエル・セラがまずはマシンの感触を確かめ、その後はベン・タックと交代しながら木村はコースの感触を確かめていく。木村はこのセッションを1:45.895で終えた。

午後のセッションでは木村から走行をスタートした。初めの15分で予選シミュレーションを行う。その後ベン・タックへ交代。走行中にマシントラブルが発生し、ピットで作業をした後に再度出走した。ダニエル・セラはアンダーステアを訴え、チームは翌日にマシンセッティングを変更する事を決定した。木村としては1:45.648を記録して初日の走行を終える事となる。

PRACTICE / BRONZE TEST
フリー走行1では前日よりもサスペンションの硬さを2ステップほど上げる変更を行った。プロドライバー2人で変更に対するレビューを行う。初日よりも好感触との事で最後に木村へドライバー交代をする。木村は17周を走り、1:45.105を記録。木村もこのセッティングを気に入った様だった。

フリー走行1とフリー走行2の間に行われるブロンズテスト。ここではブロンズドライバーのみ30分間の走行時間が与えられる。ここでは予選シミュレーションを行った。路面温度は32℃。決勝で予想される温度に近い。ここで木村は1:45.904を記録してブロンズテストを終えた。

このブロンズテストの上位5台はフェラーリ以外の車両で、今回のBOP(性能調整)がフェラーリに対していかに厳しいかが伺える。マシンの感触はすごく良く、木村のタイムはフェラーリ最速の記録であり、予選やレースに向けてポジティブな印象でこのセッションを終えた。


フリー走行2ではベン・タック、ダニエル・セラからスタート。途中フロントのサスペンションセッティングを変更してマシンの感触を確かめる。最終走者の木村は6周を2セット走行。1:47.878を記録してフリー走行2を終えた。


QUALIFYING
これまでのデータからフェラーリが上位を狙う事は難しいのは誰の目にも明らかだった。その中でも木村は自分のベストを尽くす事を念頭にコースへ向かっていく。
木村はタイヤを作動させるのが上手く、アタックラップに早く入れるドライビングスタイルを有する。その為、4ラップ+3ラップと一度ピットインした上で新品タイヤでアタックできるラップ数が多いのは有利だ。そして後半の3ラップの中で木村は1:43.820を記録して5番手を勝ち取った。ここでもフェラーリ最速であり、次に速いフェラーリに比べても0.7秒も速いタイムであった。今回のフェラーリのBOPであれば下位に沈んでもおかしくない状況だった為、十分な結果だっただろう。
実はチームスタッフがパドックを歩いていると他チームから「木村さんがル・マン以降、さらに速くなったが、何が変わったのか」と聞かれる場面が何度かあったそうだ。本人もル・マンの前に行ったフランスのポール・リカール・サーキットから新たな車の走らせ方を会得した様で、今年は昨年に比べてもマシンを感じて走る事ができている。体感として0.7秒は前年より早く走れる様になったと本人も感じている。
最終戦に向けて木村もチームも楽しみな結果で終える事ができた。



RACE
レース当日に行われるサイン会では木村は相変わらずの人気ぶりだ。CARGUYのTシャツを着たファンや、木村の乗るマシンのモデルカーを自作する熱心なファンもおり、海外レースでは顔馴染みのファンも増えてきている。
30分間のサイン会を終えた後、木村はスタッフと談笑をしながらグリッドへ向かうなどリラックス出来ており、とても良い状況だ。そして遂に今年最後のレースを迎える事となった。
レース前、木村は4時間という長いレース時間を考慮してチーム側とポジションを下げてでも無事にスティントを走り切る戦略で行く事を確認していた。これは3戦目のイモラにおいて眼前で発生したクラッシュに巻き込まれる形でクラッシュしてリタイア、ポイントを取得できなかった苦い経験があったからだ。クラッシュが予想される場面ではそこに近付かない様にする。これは耐久レースにおいて大切な要素であるとチームとしても改めて認識していた。
さて、2周のフォーメーションラップを終えるといよいよ今シーズン最後のレースがスタートとなる。5番手スタートだが、シリーズチャンピオンを狙うには4時間後にはトップチェッカーを受けて帰って来たい。
しかし開始直後、前を走る23号車マクラーレンがスタートに失敗してスピードが上がらない。追突しそうになった木村含め後ろに続いた3台はこれを避けたものの、ルール上通らなければならないグリッドボックスを通過できず、10秒のピットスルーペナルティーを受けてしまう。そして続くターン5では他車両が殺到する中で接触を避けてポジションを10番手まで落としてしまう。
さらに翌周、66号車フェラーリに左リアを接触されスピンを喫し、最後尾となる13番手にまで後退してしまう。後にこの66号車にはペナルティが課せられた。
しかし木村のペースは6番手以上の車両と同じペースであり、ここから十分に追い上げられる所にいる。途中クラスの異なるLMP2からの接触を受けながらも、木村は自力で9番手まで順位を上げると2回目のピットストップでタイヤ無交換でピットアウトを敢行。5番手でコースに復帰する。これによりピットタイムを抑えつつ、プロドライバー2人に新品タイヤを残してバトンを渡せる事になる。木村としては中古タイヤで走り続けなければならないが、チームは木村の走りを信じて送り出していった。
一時期4番手まで順位を上げ、3スティント2時間以上を走り切り、最終的には7番手でプラチナドライバーのダニエル・セラにバトンを託す。
ダニエル・セラも順位を上げるべく、必死の追い上げを試みるものの突如としてマシンの感触が変わり、ペースが上がらなくなってしまう。ダニエル・セラから最終走者のベン・タックにマシンが託されたものの、ベン・タックもダニエル・セラ同様、突如としてペースダウンしてしまう。
他チームも安定した速さを発揮した結果、2名のプロドライバーの奮闘虚しく、7番手にてチェッカーを受ける事となった。後に判明した事だが、2人のペースが下がったのはリアタイヤの内側に剥離が見つかり、それが原因でペースを上げられなかったとの事だった。この結果から、今年のELMSはシリーズランキングを5位で終える事となった。






KIMURA’S COMENT
今回のレースは予選でフェラーリが全体的に落ち込む中でフェラーリ勢のトップを取れたのは、自分の走りが出来たという事だと思っています。決勝レースは最終戦という事もあって、厳しいぶつかり合いがある中で少しポジションを落としてしまいレースペース全体もプロも含めて足りなかったので、この順位が精一杯だったと思います。
シリーズを通して言えば一歩力が及ばなかった所があるけれども、自分自身の走りとしては周りのチームからも1秒近く上がった様に評価されているし、自分もその新しい乗り味の感触が出て来ているので、ドライビングとしては大いに成長を感じられた一年でした。

DANIEL SERRA’S COMENT
今回の私たちにとってのこのレースは(BOPがフェラーリに対して厳しかった為)マニュファクチャラーとして速さが欲しかったです。その中でベストを尽くし、レースを7番手で終えられた事はできる事をやり尽くした結果だったでしょう。
この一年、良いシーズンをケッセルという良いチームで過ごす事ができました。また来年のシーズンを見据えてトップを目指していきましょう。

BEN TUCK’S COMENT
残念ながら望んでいた結果ではありませんでしたが、本当に最大限できる以上の事を行いました。レースではフェラーリの中で2番手の様な形になってしまいました。木村さん、CARGUY、そしてケッセルレーシングの皆さんには今シーズンを通じて感謝の言葉を伝えたいです。
私たちはいくつかのレースで本当に力強いシーズンを過ごす事ができました。いくつか不幸な場面もありました。そのうちの1つは(クラッシュに巻き込まれてリタイアした)イモラのインシデトです。あれがなければ力強いシーズンになったはずです。本当に残念でした。
しかしこの一年一緒に走って下さった全ての方に感謝したいと思います。本当にありがとうございました。

他のジェントルマンドライバーも実力を上げる中、木村も確実に成長を重ねた1年だった。木村本人よりも他のチームやドライバーがそれを感じている。声援を送ってくれる世界中のファンの為にも、木村はまた来年も成長してこの舞台に戻ってくるだろう。
























































