2025 Ligier European Series – Le Castellet Heat

急遽のスポット参戦でFP1トップタイム、レース2ではクラス優勝を飾る
そしてル・マン 24時間でのリジェ参戦も決定

5月3日
ポール・リカール・サーキット
フランス・ル・キャステレ
Pegasus Racing #16 Ligier JS P4
Takeshi Kimura / David Caussanel

Qualifying 1 (Le Castellet) – 1st (2:09.181)
Qualifying 2 (Le Castellet) – 1st (2:11.062)
Race 1 (Le Castellet) – 2nd (+18 points)
Race 2 (Le Castellet) – 1st (+25 points)
[AM Classリザルト]

Drivers Championship – 4th (43 points)
Teams Championship – 2nd (86 points)

RACE REPORT

木村が年間出場するELMSと同時に開催されているLigier European Series(リジェ・ヨーロピアン・シリーズ)。ル・マン 24時間参戦への入門カテゴリーとして知られるレースである。レースはLMP3車両をベースに作られたプロトタイプマシンの「リジェJS P4」とGTマシンをベースにした「リジェJS2 R」の2クラスがある。

木村がジェントルマンドライバーを支援するプログラム。そこでサポートする田中選手はJS P4のカテゴリーでジェントルマンドライバー2名により構成されるアマクラスに出場している。

今回田中選手が急遽ビジネスの都合でレースの参加を見送るとの連絡があり、木村が代役を務める事となった。車両はペガサスレーシングの16号車。木村と共に走る僚友はこのクラスへ既に参戦経験のあるフランス人ドライバー、ダビド・コサネル選手だ。

ペガサスレーシングのオーナーであるジュリアン氏は過去にLMP2クラスでル・マン 24時間の出走経験があるベテランドライバーである。彼自身も木村が乗るマシンと同車種でプロクラスにエントリーしている。

木村にとって初となるリジェ。チームオーナーのジュリアン氏から話を聞き、チームへの挨拶を済ませると早速シート調整に入る。時間的にも新しいシートを作成する余裕はない為、既存のシートにクッションを追加してひとまずは走れる状態にした。翌日からはフリープラクティス(以下FP)が始まる。

リジェのスケジュールは慌ただしい。金曜に2回のFPを行い、その日のうちに予選を2回行う。そして土曜日にもレースを2回行って終了という2日間で終了するパッケージが組まれている。木村が参戦するELMSは木曜から日曜までの4日間かけて行われるが、リジェはその半分の日数で行われるのだ。

初走行のFP1。まずはマシンの感触を確かめていく。経験のあるダビド氏が先に走っているのでそれを参考タイムとして見ていく。木村はダビド氏からおおよそ1秒から0.5秒落ちのタイムで走行を刻んでいった。迎えた7周目、トラックリミットとなりながらも2:13.3をマークし、ジェントルマンドライバーの中ではトップタイムでFP1を終えた。この結果にはペガサスレーシングのチームクルーの誰もが驚き、同時に喜んでいた。

そしてFP2でも木村は着実に走行経験を積み、マシンの特性を掴んでいく。迎えた予選1はコサネル選手が担当。予選2を木村が担当した。参戦するアマクラスでは予選1、2共にトップ通過だった。ルール上、翌日のレースでは予選1を担当したドライバーがレース1でスタートドライバーを、予選2を担当したドライバーがレース2のスタートを担当する。つまり木村としてはレース1はセカンドドライバーを、レース2ではスタートドライバーを担当する。

レース1はコサネル選手からスタート。スタートの混走を上手く切り抜け、ターン7の手前でブレーキをロックさせてしまいタイヤスモークを上げつつも素早くターンインしてシケインを駆け抜けて行った。コサネル氏は予選でプロクラスのドライバーを超えるタイムを記録するほどに速い。順調にレースを運んでいき、クラス1位のままセーフティーカーが導入されたタイミングで木村にバトンをパスした。レーススタートから30分が経過し、どのチームもこのタイミングでのドライバー交代が最適と判断。全車一斉にピットレーンへ殺到してきた。

レース残り18分の所で木村が止まりきれずにコースアウトしてしまう。前半にブレーキロックしたタイヤの為、グリップがいつもより無く、ステアリングからも不審な振動として伝わっていた。その隙を突いてライバルの58号車が木村をパスしていく。上位カテゴリーであるELMS GT3クラスに参戦する木村がリジェをドライブするのは注目の的になっており、英語放送、フランス語放送でも木村の走りに注目が集まっていた。しかしリヤのグリップを大幅に失ったタイヤでは勝負する事が出来ず、クラス2位でレース1を終えた。

続くレース2は木村がスタートドライバーとして走行する。タイヤも新品に交換し、レーススタートとなった。木村は鮮やかな走りを見せ、2番手を走行する58号車を46秒以上引き離す。開始から30分経過した所で木村はコサネル選手にマシンを託した。このギャップがレース2での重要なポイントになった。コサネル選手の走行中、マシントラブルの影響でペースが下がってきてしまった。しかし経験豊富なドライバーだけあって着実な走りを見せる。40秒以上あったギャップも最後には7.681秒差まで縮められたものの、何とか1位でレースをフィニッシュさせる事ができた。木村が大量リードを築けていなければ逆転されていた。チームワークで勝ち取ったクラス優勝だった。

初参戦のリジェを終え、木村はとても満足していた。ピュアなレーシングカーの感覚を木村が楽しめた事もある。しかし何よりペガサスレーシングの家族経営的なチームで走れる事を楽しんでいた。木村は国際的なレースにも参加するが、根っからの「カーガイ」である為、ファミリー要素があり絆の強い環境の中でのレースを心から楽しめる性格なのだ。ファミリーチームというのも例えではなく、チームクルーの中にはジュリアン氏の子供達が実際にいる。

そしてこの走りを見ていたオーナーのジュリアン氏からル・マン 24時間の期間に行われるレースにジュリアン氏と組んで出てみないか?というオファーが木村宛にあった。コースはもちろん、サルトサーキットである。スケジュールも木村が参戦するGT3クラスのル・マン 24時間のテストデーに当たる日にレースが行われる為、問題はない。木村は即座にオファーを受けた。

そして同時にペガサスレーシングから出走しているJS2 Rのシートが空いており、このシートを木村が行っているジェントルマンドライバープログラム用に確保してくれるという。

今年のル・マンウィークではル・マン 24時間の他にもLigier European Series(リジェ・ヨーロピアン・シリーズ)での木村の走りも皆様にお楽しみ頂けるだろう。

2025 LIGIER EUROPEAN SERIES RACE CALENDAR