2026 ELMS R2 Le Castellet
接触により13番手まで後退するも、
チーム戦略が奏功し、トップチェッカーでフィニッシュ。シリーズランキング1位に浮上

4月30日 – 5月3日
ポール・リカール・サーキット
フランス・ル・キャステレ
Kessel Racing #57 Ferrari 296 LMGT3 Evo
Takeshi Kimura / Mathys Jaubert / Daniel Serra
Qualifying(Le Castellet) – 7th(2:04:791)
Race(Le Castellet) – 1st(+25 points)
Drivers championship – 1st(40 points)
Teams championship – 1st(40 points)
ル・マン 24時間への招待枠を賭けて争われるELMS(ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ)。
初戦のバルセロナ(スペイン)戦を3位で終えたチームクルーは2戦目となるル・キャステレ(フランス)戦へと向かう。
今年チームに加わったフランス人ドライバーのマティス・ジョベールにとっては地元でのレースとなる。






KIMURA’s COMMENT
「(前回の)第1戦の3位はピットミスもある中での3位だったので、もしかしたら1位もあったかもしれないレースを振り返りながら今回のレースに臨みました。今回はまとまってしっかり1位になれました。凄い速いドライバーが多い中でやっと自信を持って走れるようになりました。シリーズランキングも1位という事なのでこれから(サクセスウェイトの影響で)重量が重くなるけれども、しっかりと4位を狙いながら走っていきたいと思います。」

木村は今回のキャステレ戦ではフリー走行前にテスト走行が2本予定されている。その前日にシルバードライバーのジョベールから招待されてIDEC SPORTの施設にあるシミュレーターで練習を行った。地元ドライバーであるジョベールから走り方のアドバイスを受けた後、彼が所属するジェネシス・マグマ・レーシング(以下ジェネシス)の施設も見学させてもらった。
IDEC SPORTはジェネシスのオペレーションを任されており、ジョベールは昨年IDEC SPORTからLMP2クラスに参戦。ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得している。
木村はここでのトレーニングで使用したシミュレーターにしか出来ない練習があるとして、この機器と同じものを渋谷で木村が開発しているシミュレーター施設にも導入する事をその場で決定した。
そして臨んだ初日のテスト走行1で木村はブロンズドライバーの中で全体トップタイムとなる2:05.574を記録。2番手の33号車コルベットのブロンズドライバーに対して0.5秒以上の差をつけ、他チームのドライバー達を大いに驚かせた。その後もテスト走行2、フリー走行1 & 2、ブロンズテストなどでレースシミュレーションや予選シミュレーションの走行を重ねる。
共に走るプロドライバーからのアドバイスによって新しいマシンの走らせ方を体得し、更に自信を深めて予選セッションを迎える事となった。









QUALIFYING
予選当日は天候は晴れ、路面温度38℃、気温19.6℃の中で迎える事となる。
今回の戦略は中古タイヤでスタートし、1周目はブレーキを温め、2周目以降に新品タイヤでアタックを開始する事となった。木村は予定通りピットインを行い、新品タイヤに交換。木村と同時にピットインを行った77号車ポルシェの後ろでコースへ復帰した。
アウトラップ、ウォームラップを経て2:04.791を記録。昨年木村自身のタイムは2:06.806であった為、実に2秒も速いタイムを記録したことになる。その後もタイム更新をする為、積極的にアタックをしたものの、4周目に記録した2:04.791が木村のベストラップとなり、7位で予選を終了。翌日のレースは4列目のグリッドからスタートする事となった。












RACE
ELMSの決勝日は毎回ファンへのサイン会が実施される。今回のキャステレ戦では過去最高となる約25,500人のファンが会場に詰め掛けた。シルバードライバーのジョベールはフランス出身の為、レース前のサイン会には地元のファンや家族、親類、友人たちが続々と集まった。フランスのファンからは「マティス(・ジョベール)が8年連続でル・マンに出走する木村さんと共に走れる事をうれしく、誇りに思う」という声をいくつも聞く事が出来た。木村と共にヨーロッパを転戦するスタッフも「ヨーロッパではル・マン ドライバーというだけで尊敬の眼差しを感じる。特に(ル・マンの地元である)フランスでは尊敬を超えて畏敬の念すら感じる事がある」と言う。ル・マン ドライバーとはそれほど特別な存在なのだ。
レース当日は雨が短時間だけ降る予報の中、気温18.0℃、路面温度25.8℃でのスタートとなった。チーム戦略は2時間ほど木村が走行し、その後にプロドライバーにバトンを渡すプランだ。昨年も雨になるのか予想が難しい展開だった事を思いながらスターティンググリッドへ向かう。そのグリッドではかつてこのELMSで木村とライバル関係であったジェントルマンドライバーの姿もあり、旧交を温める様に親しみを込めた挨拶がそのドライバーと木村の中で交わされる。ケガの影響で現在は戦列を離れてはいるが、再びグリッド上でライバルとして会える日を二人は願いながら握手を交わす。実に美しい光景だ。そして木村は自らのマシンに乗り込み、静かにスタートの合図を待つ。グリーンフラッグが振られ、2周のフォーメーションラップを終えたらレーススタートである。しかしそのフォーメーションラップ中にLMP3クラスのスピンがあり、急遽フォーメーションラップが1周追加される事となった。スピンした車両も最後尾であるLMGT3クラスの後ろに付き、ついにレーススタートとなった。
1周目、50号車フェラーリに抜かれて8番手、その翌周、54号車ハイクラスレーシングに抜かれて9番手に後退したものの、50号車を抜き返し8番手にポジションを戻した。その後、LMGT3クラスでは5番手の74号車フェラーリを先頭に59号車アストンマーティン、55号車フェラーリ、そして8番手の木村までが1つの集団となって走行する事となる。木村はこの後何かが起こる事を予想し、冷静に後ろからその流れを見ていた所、ターン2からターン3に向かう途中、この集団の前で他クラスのスピンが発生。この混乱で集団が乱れた所に木村は59号車アストンマーティンと55号車フェラーリを抜いて6番手まで浮上する。
スタートから24分経過後、ターン11にて50号車フェラーリが77号車ポルシェと他クラス1台の絡むクラッシュによりタイヤバリアへ激突し、FCYが導入される。12周目にチームは給油とタイヤ交換を実施して、残り1時間30分以上を木村に走行させ、プロドライバーへバトンを繋ぐ事を決定。クルーの抜群のチームワークにより木村を送り出していく。
そして2番手を走行していた62号車メルセデスがスタート手順違反によりピットスルーペナルティを消化して木村は5番手に浮上する。チームは木村に燃費走行とタイヤを持たせる事を希望していた為、速さに勝る62号車が木村の後方から迫ってきた時、無理に争って燃費、タイヤを消耗する事はないので相手が抜けるタイミングがあれば無理せず先行させる事を確認、レースの行方を見守る事となった。
しかしレース開始から47分を経過した頃、その62号車メルセデスが57号車の木村のインを突く形で接触して木村は13番手(50号車がリタイアの為、実質最下位)まで後退してしまう。その後63号車のメルセデスがスピンして12番手に浮上するとスロー走行する23 号車マクラーレンをパスして11番手に浮上、さらに前を走る86号車フェラーリがスピンして10番手まで順位を戻したものの、63号車メルセデスに抜かれて11番手に後退する。燃費走行を続けながらも77号車ポルシェを抜いて10番手までポジションを戻す事に成功する。するとレーダーに雨雲が出現し始めた。レースも膠着状態が続いている。チームはここで戦略を変更し、ギャンブルに出る。木村を規定の最低乗車時間で走行を終わらせ、他のチームがブロンズドライバーで走行を続ける中、プラチナドライバーのセラにバトンを繋ぎ、順位を上げるだけ上げて最終走者としてシルバードライバーのジョベールにマシンを託すというプランだ。
レース開始から1時間33分が経過した39周目、木村はピットインしてセラにドライバー交代し、この日の走行を終えた。他のライバル勢も続々とピットインを行い、プロドライバーに交代していく。木村が走行していた57号車は燃費走行を行いながら前を走る59号車アストンマーティンと63号車メルセデスに離されずにレースをしていたのが功を奏して給油時間が短く済み、セラに交代する際に59号車と63号車の前に出て8番手まで浮上する事に成功した。その後、セラはポジションを維持したまま67周目まで走行、最終走者のジョベールにすべてが託された。
残り約1時間20分のタイミングで木村と同じくケッセル・レーシングから出走して3番手を走行していた74号車フェラーリの右リアホイールが斜め上を向く形で外れてしまう。これにより7番手まで浮上。バーチャルセーフティーカーが導入される。ここで各車がピットインを実施。チームによって直前の給油を短くして順位を上げた所があったが、これが災いして給油時間を長く取らざるを得ない状況になる。57号車は前回の給油で満タンにしていた為、ジョベールは最小の給油で済ませる事が出来た。そしてピットを出た際には3番手まで急浮上した。この時点で57号車の前を走るのはトップが33号車コルベット、2番手が75号車ポルシェで両車共に速さに定評のあるマシンとドライバーラインナップであり、強力なライバルがジョベールの前にいる事を意味する。
セーフティーカーが導入され、各車のギャップが縮まった所、残り57分でレースが再開された。ここからは1時間弱のスプリントレースとなる。1位までのタイム差は1秒以内という超接近戦だ。残り55分。ここでジョベールはターン10から前を走る75号車ポルシェと並走しながら最終コーナーで完全に前に出る事に成功、地元ドライバーの活躍にグランドスタンドにいるフランスの観客からの声援が沸いた。ジョベールは次の獲物に33号車コルベットを捉えると徐々に距離を詰め、残り47分、最終コーナーで33号車のインに飛び込み、抜群のマシンコントロールで大胆かつ鮮やかに抜き去りトップに浮上した。会場からは驚きの声と大きな拍手がジョベールの走りを讃えている。そしてジョベールはトップに立ってもペースをゆるめる事はなく、この様子からレース終了までに給油でピットストップを行うのを予測するチームもあったようだが、ジョベールは燃料を持たせながらも一定のペースで2番手とのギャップを17秒残し、チェッカーフラッグが掲示されるまでレースを支配した。この活躍によりチームはこのレースで優勝し、年間のチャンピオンシップもトップに躍り出る事が出来た。そしてジョベールはファンの投票によって決められる「ウィングフット・アワード」のLMGT3クラス部門でも表彰を受ける事になった。
次戦は7月5日(日)、昨年前方のクラッシュに巻き込まれる形でリタイヤとなったイモラ(イタリア)戦である。しかしケッセル・レーシングと木村にとって次回のレースは木村としては8年連続、8度目の挑戦となるル・マン24時間が6月13日(土)に行われる。昨年よりも速さを増した木村。両レース共に力強いレースで観客を魅了してくれるだろう。ぜひ期待して応援して頂きたい。

































