2025 ELMS RD.5 SILVERSTONE

Kessel Racing #57 Ferrari 296 LMGT3

Takeshi Kimura / Ben Tuck / Daniel Serra

チームとしては4位フィニッシュ。

木村はELMSでの初となるクラストップでバトンを渡す。

ELMSのカレンダーにシルバーストンが戻ってきた。最後にこの地でレースが行われたのは2019年。実に6年ぶりの開催となる。イギリスらしい変わりやすい天気に翻弄されながら懸命に戦った今回のレースレポートをお届けする。

シルバーストンは第1回F1世界選手権の場所であり、「マゴッツ、べケッツ、チャペル」と呼ばれる名物コーナーが存在する。元々は飛行場だった事もあり、他のサーキットと比べても高低差が少ない。その分横風の影響を受けやすく、イギリス特有の急な雨があるのも特徴で、ドライバーには状況に応じたドライビングテクニックが求められるコースである。

シルバーストンの走行経験がなかった木村は今回のレースに向けて7月にプライベートテストを行っていたが、結果としてそれが奏功した。


午前中のセッションはプロドライバー2名がまずはマシンの感触を確かめ、最後に木村が走行をするプランだったが、赤旗中断3回を挟みながらのテストとなり、木村は7周のみの走行に留まり、ベストラップ2:07.162でこのセッションを終えた。

午後のセッションでは木村から走行をスタートした。トータル22周を行い、2:02.690を記録。車両とコースに身体を馴染ませていった。

このセッションでLMGT3クラスは最下位から4台がフェラーリになった。この時点で週末はBOP(性能調整)がフェラーリに対して決して有利ではなく、週末に向けてタフなレースが予想される事となった。

フリー走行1ではいくつかのマシンセッティング変更を行った為、プロドライバーのダニエル・セラとベン・タックで検証した後に最後に木村が走行するプランに決定した。

走行に向けて木村が装備を整えてピットで待機していた所、ベン・タックよりマシントラブルが報告される。チームも作業が必要と判断し、木村はこのセッションを走行できずに終了した。

全く初めてのコースで初日のセッション含めて木村は十分な走行時間があるとは言えない状況だ。せめてもの救いは7月にテストを行い、マシンの走らせ方やコースを学習していた事だった。


フリー走行1から2時間40分後に予定されていたブロンズテスト。チームは見事に車両の問題を解決し、木村が走行できる状態に戻してくれた。

ここでは13周を走行。タイムは2:02:976で全体12位だったものの、このタイムは途中他の車両に阻まれてタイムが伸びなかった。しかし理論上のセクタータイムでは2:01.266で全体2位。木村はここで新たなマシンコントロールの技術を体得し、確かな手応えを感じていた。

フリー走行2ではマシンセッティングを再度変更し、ダニエル・セラ、ベン・タックが車両確認を行い、木村は最終走者として残り15分で予選シミュレーションを行うプラン。フルコースイエローや新品タイヤでのアンダーステアに悩まされるも、その中でも木村は2:02.613を記録して走行を終えた。

走行20分前に雨が降った為、予選スタート時には晴れてはいるが路面は濡れている状態だった。チームはウェットタイヤでスタートする事を選択。全チームウェットタイヤを選択してタイムを更新していく。そして残り3分。7番手を走行する木村にチームからピットインの指示が無線で入る。しかしこのタイミングはアウトラップ中にチェッカーを受けるギリギリのタイミングだ。タイヤ交換を担当するチームにも緊張が走る。一糸乱れぬ動きでタイヤ交換を終え、木村を送り出す。木村はアウトラップから全力で走り、チェッカー数秒前にアウトラップを終えた。そのまま1発のみのアタックラップを敢行する。セクター毎にベストラップを更新し、2:13.317を記録して3位を勝ち取った。固唾を飲んで見守っていたピット内には安堵の空気が流れ、その次に拍手と歓喜の声が溢れた。

レースは悪天候が予想される為、当初予定よりも1時間早くスタートする事となった。

スタートで63号車メルセデスをパスして2番手に浮上する。木村は一時期クラストップのペースまで上げつつも安定した走りを見せる。2度の赤旗中断を挟みながらも85号車のポルシェを追いながら、この週末、速さで勝る59号車のアストンマーティンが容赦なく木村にプレッシャーをかけ、オーバーテイクを仕掛けようとする。木村の巧みなドライブによって守り切っている中、セーフティーカーが導入された。多くのチームがここで給油を行う。蜂の巣をつついた様に続々とクラス違いのマシンも含めてピットに殺到する。

木村の乗る57号車ケッセルレーシングのクルーも抜群のチームワークで木村を送り出した。木村の前を走っていた85号車ポルシェと1つ後ろを走っていた59号車アストンマーティンもピットインしていたが、木村の方がピットアウトが早く、この2台の前に出た。木村は5番手でコースに復帰。レース再開後、60号車ポルシェをパスして4番手に浮上。その後前を走る3台がそれぞれピットに入りトップに立つ。

85号車ポルシェが迫るが、チームは給油回数を減らす為、ロングランを木村に要請。速さに勝るポルシェに抜かれて2番手になったものの、85号車にはドライブスルーペナルティーが課され、その消化のためにピットインを行った。その間にポジションをトップに戻したが、後続にはプロドライバーに交代した各車が迫ってきていた。ここでチームはシルバーのベン・タックに交代を決断。木村にピットインの指示を出した。

ベン・タックへ交代した時には9番手までポジションが落ち、チームが予想していたよりも遅い雨にたたられたものの、ベン・タックの巧みで冷静なレース運びによって3番手で戻って来た。最終走者のダニエル・セラはコースに4番手で復帰。前を走るのは50号車と86号車のフェラーリ、そして82号車のコルベットの3台だ。表彰台争いの局面でダニエル・セラが追い上げにかかる。しかし雨による視界不良によってレースは約8分を残した時点で赤旗が掲示され、そのままレース終了となった。

今回の結果よりシリーズランキングを8位から5位に上げた。トップとの差は19ポイント。シリーズチャンピオンの望みを残したまま、木村は最終決戦の地であるポルティマオへ向かう。

次戦のポルティマオは2026年のル・マン 24時間参戦を賭けた最期の戦いとなる。木村の走りに是非注目して欲しい。

予選はタイヤの2セット投入というウルトラCもあってポジション3位を獲得でき、また、ELMSに参戦して初めて13台中、ポジション1位で帰ってこれたというのはレース結果如何に関わらず自分の成長を感じられたレースだったと思っているので大満足です。

私にとっては奇妙なレースとなってしまいました。途中で大雨が降り、赤旗が掲示されたのです。(チームとしては)中盤に考えていた戦略が上手く機能しませんでした。その結果、レースを4位で終える事となりました。

レースは全体的に良い様に見えました。特に木村さんは素晴らしいスティントをこなしてくれました。その中でもアストンマーティンを抑え続けたのは見ていて楽しかったですし、本当に素晴らしかったです。戦略はそれを下した時点では良い選択の様でした。もし木村さんのスティントの終わり際から20分早く雨が降っていたら最高でしたが、実際には私がドライビングを始めてから10分後に雨が降り始めました。スリックで出ていた為、走行開始10分でピットに入り、ウェットタイヤに交換する必要がありました。これは単に不運だったのです。戦略を下したタイミングに戻れば常にその時の最良の戦略を取っていたと思います。私自身はレースを楽しむことができ、実際に何台かの車をオーバーテイクすることができました。チーム全体で見ると4位ですが、その差は決して大きくなかったので、ポディウムに乗れなかったのは残念ですし、勝ちたかった(1位になりたかった)のですが、レースでは時々こう言った天候になることがあり、今日はそれが起きてしまったのでした。