LeMans 24Hours 2020参戦レポート

「CARGUY RACING」にとって2度目のルマン挑戦となる今回。新型コロナウイルスの影響で本来の6月から9月に変更されただけでなく、一部の個室付きVIPを除き基本的に無観客となるなど、感染症対策が厳重に実施されています。入場者は直近96時間以内のPCR検査での陰性の証明書提出が求められ、常時マスク着用が義務となっています。

チームのドライバーは代表の木村と、スーパーGTでも活躍するケイ、さらに若手ながらメルセデスAMGのファクトリードライバーを務めるアブリルの3人。マシンは昨年と同じフェラーリ488GTEです。

急に決まった参戦だったため事前のテストなどできず、走行初日の木曜日(17日)は、やるべきことの多い忙しい一日でした。そんな中でも公式練習1回目はクラス3位と順調な滑り出しに。

同2回目にトラブルが出た影響で、続く公式予選は12位にとどまり、上位6台による2度目の予選「ハイパーポール」への進出は逃しました。しかし同日夜の公式練習3回目はクラストップタイムをマーク。決勝レースに向けて順調な仕上がりで、チームの雰囲気はとても前向きです。

18日の公式練習4回目はセッティング変更の確認とドライバーのコース習熟にとどめ、午後からマシンを分解整備。24時間をノートラブルで走り切れるよう努めています。

決勝は19日午後2時30分にスタート。6月の夏至に近い頃に行われる例年、昼の時間は16時間以上ありますが、今年は秋分が近い時期のため12時間20分ほど。3時間40分も長くなった夜の時間帯を速く走れることが、ドライバーとマシンに求められます。

 

いよいよ19日、決勝当日です。天気予報通り早朝から雨が降り始め、路面はウエットとなりました。

午前10時30分から15分間だけ行われたウオームアップ走行は、ケイが担当。クラス2位のタイムをマークするなど好調さを感じさせました。

午後2時30分、決勝スタート。スタートドライバーはケイ。クラス12番手からでしたが、早々に2台をかわして10番手へ。4周目にはさらに2台を抜いて8番手へと、好調な出だしでした。

ところが、ここでギアが入らなくなるトラブルが発生。ピットに戻り、トラブルシュート。ECUを交換してコースへ戻りましたが、この間に7周遅れとなってしまいました。

その後、2スティントをケイが走行しました。1回の給油で1時間弱の走行が可能なので、途中1度給油してダブルスティントを敢行。

31周目に木村にドライバー交代。途中1度給油してのダブルスティントを敢行します。57周目にアブリルに交代。再びダブルスティントを行い、ケイに交代しました。

その後、コース上でクラッシュが発生。大きく破損したガードレールの修復のため、SCが入りました。このタイミングで予定を変更して木村に交代。コースインすると、間もなくSCが解除されました。

木村は、ここから「トリプルスティント」という、プロ顔負けの大きなチャレンジに臨みます。すっかり日も沈んだ夜のサルテ・サーキット。周回ごとにタイムを上げ、ついにプロの領域と呼ばれる「4分の壁」を突破!! 「ブロンズドライバー」としては驚異的なタイム、3分57秒400をマークしました。

昨年、ルマンに初めて挑戦し、クラス5位に入賞した昨年の経験と反省から、木村が目標として掲げていた一つが自身の周回タイム4分切りでした。大きな挑戦に成功しました。

 

しかし直後、モニターに映し出されたのは、木村が乗る70号車がグラベルでストップした姿でした。自身の限界を超えて攻め続けた先に、グリップの限界をわずかに超えてしまっていました。

幸いコース役員のサポートでコースに復帰し、ピットへ。

交代したケイも3連続スティントを敢行、圧倒的なラップタイムで追い上げていきます。第2スティントでサスペンショントラブルが発生しましたが、何とかピットへ戻り、修復してコースへ復帰すると、同じフェラーリ488GTEを使うチームの中で、その時点のトップタイムを記録するなど、ペースを上げました。

次に交代したアブリルも3スティントを走る予定でしたが、コースインした翌周の1コーナーで再びギアボックスのトラブルが起きてコースアウト。グラベルにつかまり、リタイアとなってしまいました。173周目、14時間を過ぎたところでした。

残念な結果になりました。急な参戦で準備やテストも不足する中、私たちもパートナーのAFコルセも短時間で最善を尽くしましたが、まだ足りないものがあったということです。

木村はテレビの取材に「今回は急な参戦で準備も何もない状態だったので、リタイアするだろうと思っていた。1億円をかけた練習をしようと話していた。3分台を出せて自分としては満足している」と、悔しさを押し殺して話しました。

そして「この経験は絶対に来年につながる。来年はWEC挑戦も視野に入れている。フェラーリともしっかり話し合いたい」と、さらなる高みを目指すと宣言しました。