2026 ELMS R1 BARCELONA
2時間を超える木村のミスのない走りでチームに戦略の幅が増え、
開幕戦をポディウムで飾る

4月6日-12日
カタロニア・サーキット
スペイン・カタルーニャ州バルセロナ
Kessel Racing #57 Ferrari 296 LMGT3 Evo
Takeshi Kimura / Mathys Jaubert / Daniel Serra
Qualifying (Barcelona) – 6th (1:43.530)
Race (Barcelona) – 3rd (+15 points)
Drivers Championship – 3rd (15 points)
Teams Championship – 3rd (15 points)
今年もELMS(ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ)が幕をあけた。
年間のシリーズチャンピオンには翌年のル・マン 24時間への参戦権が与えられる。
ル・マン 24時間へ参加するにはWECへのエントリーのほか、ELMSやALMS(アジアン・ル・マン・シリーズ)、IMSAなどを勝ち上がるか、主催者であるACO(フランス西部自動車クラブ)に実力を認められたチームに与えられるインビテーションの枠で参加する他ない。
F1モナコ、インディ500と並んで世界三大レースに数えられるル・マン 24時間は世界中のドライバーが憧れるレースである。ブロンズドライバーとプロドライバー2名の合計3名の組み合わせで争われるこの舞台は文字通り世界一速いドライバー、チーム、そしてマニュファクチャラーを決めるレースなのだ。
今シーズンはシルバーのドライバーラインナップをベン・タックから新たにマティス・ジョベールを迎えて挑む。マティス・ジョベールは昨年のELMS LMP2クラスの年間チャンピオンを獲得。今季はWECのハイパーカー部門でジェネシス・マグマ・レーシングから出走するフランス人ドライバーだ。ジョベールの加入はヨーロッパでは驚きをもって報じられ、今季もシリーズ開幕前から注目を浴びる事になった。その中で幕を開けたバルセロナ戦の模様をお届けする。



シーズンスタートレースの為、今回は4月6日(月)と4月7日(火)にテストセッションが各日2回、合計4回設けられている。昨年に比べて今年は1週間遅いスタートとなった。
収益不動産の売買を手掛けるルーフ社を経営する木村は、昨年は年度末決算と重なる関係で初日の走行には参加出来なかったが、今年はテスト初日から参加する事が出来た。
今年はマシンが昨年のマシンの進化版である Ferrari 296 LMGT3 Evo になった。到着後すぐにマシンの元へ行き、共にレースに参戦するKESSEL RACINGのスタッフより昨年との違いをレクチャーしてもらった。半年間全くレーシングカーに乗っていなかったものの、新たなパッケージは昨年のモデルよりも乗りやすくなっており、好感触なまま2日間に渡るテスト走行を終えた。






翌日と翌々日は走行予定がない代わりにメディア対応が入っている。空いた時間をぬって木村は現地のシミュレーターでトレーニングを実施。エンジニアの他、プロドライバー2名も帯同し、木村の走りとシミュレーターのコースや車両のリアリティさのフィードバックを行なった。
実はこのスペインのシミュレーター企業こそ、渋谷で現在木村が40億円をかけて進めているシミュレーター施設の開発を共に行なっているパートナーなのだ。半年以上日本のスタッフや日本の様々なプロドライバーと共にテスト開発を行いながら開発したマシンデータは、世界で活躍する2人のプロドライバーから見てもかなりリアルに近い挙動をする事が確認できた。カタロニア・サーキットのコースデータで実際とは異なる箇所があり、最新の変更を加える事になった。これはリアルでレースをしている木村、CARGUYだからこそできる開発だろう。スペインの企業はF1のとあるチームのシミュレーターの開発にも関わっており、そこの知見も活かしながら開発を行なっている。
翌日からの2回のフリー走行、ブロンズテストを通じてタイムを上げながらもダニエル・セラの走りに合わせて行く木村。昨年のELMS以来レーシングカーには乗っていなかったからか、フリー走行2回目の後半には珍しく疲れを訴える場面もあった為、走行をマティス・ジョベールに託して終了。予選へ臨む事となった。






Qualifying
路面状況:ドライ
気温:27.6℃
路面温度:40.3℃
タイム:1:43.530
15分間の予選では途中タイヤ交換のピットインを挟み、2度アタックラップに入れる計画を立ててスタートした。今回ピットレーン出口から数えて10台目の場所に位置していた為、そのままの並びでは混走状態で走行する事となる。チームとしてはなるべく木村を前に出してクリアラップが取れるようにしたい。チーム一丸となって木村を前に出すべく最速で準備をしてピットレーンに送り出していく。その結果、前から3番目の位置に行く事へ成功。そのまま予選スタートとなった。
アウトラップでしっかりとタイヤに熱を入れて行き、翌周にアタックラップを敢行した。しかしターン10の出口で前を走行する95号車アストンマーティンが更にその前を走る33号車コルベットとの間隔を空ける為に減速。木村はその影響を受けて減速し、この周は満足行くタイムを出せずに終わってしまった。チームはこれを予測していた為、すぐさま無線で木村にピットインを指示し、新品タイヤに交換してコース上へ再び送り出した。
2回目のアウトラップの翌周から再度アタックラップに入っていく。周りのライバル達もタイムを上げるべく走り続けて路面温度が上がってきた、木村としては最後のアタックラップで1:43.580を記録。これが予選でのベストタイムとなり、14台中昨年と同様の6番手で予選を終える形となった。
予選後のミーティングでレースでは木村が安定してラップタイムを刻み続ける走りが出来るのが確認出来ていた為、後半の追い上げを狙う戦略になった。また、レースの展開次第では木村の最低乗車時間1.5時間を超えた走行をする可能性がある事もチームから伝えられ、当日のレースに臨む事となった。




RACE
路面状況:ドライ
気温:17.6℃
路面温度:21.9℃
レース当日、ピットへ向かう木村には現地のファンからサインや写真を求められる場面があり、それに応えながら向かって行く。出走前のグリッドウォークでは多数のモータースポーツファンが詰めかけ、サーキットの熱気も高まった現地時間12:00、グリーンフラッグが振られて今年のELMSがスタートした。スタート直後に1コーナー出口と2コーナー入口の付近で他カテゴリーの車両クラッシュがあり、7番手に後退。レースは赤旗で一度中断となる。レース再開後、51号車のフェラーリに抜かれて8番手。ドライバーはフェラーリのファクトリードライバーであるダヴィデ・リゴンだ。最後尾スタートだったが、彼は後にトップまで順位を上げて行った。77号車ポルシェがドライブスルーペナルティを消化する為、残り3時間33分の所でピットインして7番手にアップ。32周目残り2時間59分の所で55号車フェラーリがピットインして6番手までアップ。そして34周目で51号車フェラーリもピットインを行い5番手。その翌周には木村の前を走っていた75号車ポルシェと59号車アストンマーティンもピットインして3番手まで順位を上げた。
その後に木村もピットインを行うが、既にピットインした車両の後ろに入る形でコースには8番手で復帰。その後もレースが続く中、前を走る3台がピットインして5番手まで順位を上げ、セーフティーカー導入後、レース再開をした際にペースで勝る59号車アストンマーティンを戦略的に先行させて6番手に後退。その後も一貫してスピードのある33号車コルベットも無理せずに先行させて7番手までドロップしたものの、先行していた59号車アストンマーティンがスピンして7番手から6番手にアップ。その後FCYが導入された。
そして51周目にドライバーチェンジした51号車フェラーリを抜いて5番手にアップ。更に58周目、74号車フェラーリがターン10でスピンして順位を上げたものの、63号車メルセデスと55号車フェラーリに先行されて6番手に。
しかしその63号車と55号車が62周目、残り時間1時間57分にピットインして再び4番手に浮上。木村は赤旗中断の時間を含めると2時間以上はマシンの中にいる事になる。その中で集中力を保ちながらミスなく淡々と自分の仕事、すなわちタイムを安定して刻み、確実にプロドライバーへとマシンを届けるべく、コースで奮闘している。そして65周目、前を走る62号車、75号車、33号車と共に4番手まで上げてピットインした。
木村は安定したミスのない走りで6番手から4番手まで順位を上げて無事にシルバードライバーのマティス・ジョベールへとマシンを渡す事が出来た。
速さもありながらレース全体の流れを見ながら自身の走りを変えて行ける卓越した技術を備えるタイプのドライバーである。マティス・ジョベールは5番手でコースに復帰すると自身のスティントで62号車メルセデス、75号車ポルシェ、33号車コルベットよりも先行して2番手でマシンをピットまで運び、最終走者のダニエル・セラにステアリングを託した。だが、不運にもタイヤ交換の際に右リアのホイールが上手く外れずタイムを失ってしまった。その為、コースには6番手で復帰。翌周には5番手にポジションアップしたが、ポディウムには届かないと誰もが思う場面だった。しかし、ここでダニエル・セラが閃光する様な力強い走りを見せ始める。
108周目、残り25分で50号車フェラーリを抜いて4番手に。122周目、ついに62号車メルセデスを捉えてターン10の外側から仕掛けて行き、ターン13の内側を取って巧みなオーバーテイクで3番手まで浮上。お互いフェアなバトルで見応えのあるレースでバルセロナサーキットの観客席の声援も沸き立った。チェッカーまで残り2周。ピットにいる誰もが祈るようにモニターを見つめる。そして見事3位のチェッカーを受けて開幕戦をポディウムで飾る事ができた。
レース全体を振り返ると結果的に木村が粘り強く走ってピットインした事でチームとしても戦略の幅が広がり、プロドライバー2人の走りで結果を出す事が出来た。FCYやセーフティーカーのタイミングなど運が味方する事もあったが、木村の走りがなければそのタイミングが幸運ではなく、不運に繋がっていた可能性もあった。トップとは14.449秒差、2位とは3.004秒差でのフィニッシュだった。それだけにダニエル・セラに交代する際のタイヤ交換に手間取らなければポディウムの真ん中を飾れていたかもしれない結果だった。次戦はLE CASTELLETにて行われる。進化したマシンと新たなドライバーと共に、今回の雪辱を晴らすべくフランスへ向かう木村を是非応援して頂きたい。
KIMURA’S COMMENT
「ELMS第1戦、1月に怪我をして半年間レーシングカーに乗れなかったのですが、しっかりとクルマを走らせられました。全体的な速さは今回今一つでしたが、バーチャルセーフティーカーやストラテジーが上手くハマって、最後はプロが頑張ってくれて3位表彰台が取れました。ピットストップの時に13秒くらいロスしたのを考えると上出来な順位かな、と思います。去年よりもポジションを1つ落としてのフィニッシュでしたけど、今年はいけるんじゃないかと思います。」



